

「空也上人像」
ご存知ですよね?
口から6体の仏を出している、あの有名な彫刻です。
最近、私は、この彫刻に大変興味が湧きました。
調べてみると、この彫刻のモデルとなった「空也」は、平安時代、庶民に「南無阿弥陀仏」の念仏を
声に出して唱える口称(くしょう)念仏を広めた人物です。
当時の念仏は、主に貴族や僧侶のものでした。
しかし、空也は地方を歩き回りながら、橋を作ったり、井戸を掘ったり、病人を助けたり、貧しい人を救うという社会活動をしながら、「南無阿弥陀仏」と唱えることを勧めました。
今でいうなら、寺で待つ宗教家ではなく、街頭に出て人々に直接伝える活動家だったわけです。
信仰を見える化する挑戦
空也上人像は、運慶の四男、康勝が作ったものです。
空也上人像の口から出ている6体の阿弥陀仏は「な・む・あ・み・だ・ぶつ」の六文字を表しています。
『南無阿弥陀仏』の六文字を可視化したものですね。
これは現代で言えば「音」を立体化したような表現です。普通なら見えないものです。
「念仏の力」「信仰の姿」を見える形にしたかったのでしょう。信仰を見える化する挑戦をしたわけですね。
この発想、どこから来たのでしょうか。
当時の仏像の多くは静かに座る姿や立つ姿を表現したものでした。しかし康勝は、空也が今まさに念仏を唱えながら歩いている瞬間を切り取ったのです。
今にも歩き出しそうな姿の彫刻というのも当時は珍しかったと思います。
まさに宗教とアートの融合みたいな作品。現代アートでも通じるような作品です。
革命的な彫刻だと思いました。
この像を見ていると、脳がグラグラするような不思議な感覚を覚えます。
それは口から仏が現れるという非現実的な表現と、今にも歩き出しそうなほどリアルな人体表現が同居しているからかもしれません。
現実と信仰の世界が一つの彫刻の中で交差している。その違和感が、見る人の心を揺さぶるのではないでしょうか。いつか実物を見てみたいです。
そんなわけで今日は、最近気になった空也上人像について書いてみました。
読んでいただき、ありがとうございました。



